レンコールトレランスリング(RENCOL® Tolerance Ring)は、外周または内周に波形状のラジアルスプリングを持つ、カスタムデザインされた高機能部品締結リングです。トレランスリングがはめ合い部品間に組付けられると、波の圧縮力によりすべての部品が所定の位置に固定されます。
各波はばねのように、圧縮すればするほど大きな力を生み出します。このばねの反発力が部品を締結し、耐荷重・トルクなどの性能要件を満たします。 理論に興味のある方はトレランスリングの仕組みをご覧ください。
トレランスリングは、高品質のばね用ステンレス鋼、炭素鋼、または合金から製造されます。 通常、下記3部品からシステムは形成されます。
これら3つの要素が連携することで、レンコールトレランスリングは、部品の締結、トルクの伝達やトルクリミッター(スリップクラッチ)、また軸方向力制御としての役割を、設計された性能で発揮することが可能になります。
トレランスリングには多くの用途事例がありますが、大きく分けると主に4つにカテゴライズされます。
トレランスリングが2部品間で圧縮され、機械的に締結します。
この用途では静的な締結部品として使用され、どの部品も相対的に固定されるよう設計されてます。 このタイプの使用例としては以下が挙げられます。
トレランスリングは、非常に洗練されたトルクリミッターとして使用することができます。トルクリミッターとは、ある一定のトルクに達すると2つの部品間の保持力が遮断されるように設計された過負荷保護装置のことです。
トルクリミッターはさまざまな分野で使用されていますが、多くの場合、システムに不要な負荷がかかったときに、モーターやギアシステムの損傷を防ぐために使用されます。
トレランスリングのスリップ機能は、部品の位置決めにも利用できます。これは、対象物の組み立て後に任意の位相に調整、それを保持する機能です。トレランスリングは、組み立て後でも外力によってシステムがスムースに動くようになっています。そして、外力が加わっていない状態では、その位置が維持されます。
トレランスリングは、通常金属製で、開口部のある円筒形状をしています。 その外側や内側には、波形状やフィンガーと呼ばれる突起が形成されています。通常、トレランスリングの側面にはスリットが入っていて、引っ張って開いたり、押して閉じたりすることができます。その大きさは、直径3mm程度のものから110mm、中には250mmを超えるものまで、さまざまな形状やサイズがあります。 幅は10~50mm程度が一般的です。
トレランスリングの波(突起)形状は、内向きと外向きがあり、その形状は、お客様が必要とする性能に合わせて設計されます。波形状のさまざまな部分を調整することで、トレランスリングのばね性能を、用途や希望する性能に合わせて調整することができます。トレランスリングには大きく分けて2つのタイプがあります。
トレランスリングが先にハウジングに装着される場合は、ハウジングバリアブル(HV)タイプと呼ばれます。 このタイプは波が内側に向いています。
このタイプのトレランスリングは、フリーの状態、つまり未組立の状態では、リングの両端に大きな隙間があります。組み立ての際には、この隙間が圧迫されて閉じられ、トレランスリングが穴部に挿入された後、スプリングバックによってハウジングに保持されます。
トレランスリングが先にシャフトに取り付けられる場合は、シャフトバリアブル(SV)タイプと呼ばれます。 このタイプは波が外側に向いています。
このタイプのトレランスリングは、自由状態では両端が閉じているか、あるいはオーバーラップしています。 つまり、組み立て時にリングを開いて軸上にスライドさせた後、リリースすることでトレランスリングがスプリングバックで閉じ、軸に保持されます。 SVリングは通常、自動組立を使用する場合に多く使用されます。これは、隙間が閉じていることで梱包時の絡まりを防ぐことができるからです。
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その用途や特定の要件に応じて、トレランスリングにはさまざまな材料が用いられます。最も広く使用されているのは以下の通りです。
材料の選択は、トレランスリングに求められる条件によって異なります。一般的に、所定のサイズでより大きな力が必要な場合には、炭素鋼が使用されます。
レンコール サーモクラッド(RENCOL® Thermoclad)材料:サーモクラッド材料は、新しいバイメタル素材で、トレランスリングを介した熱伝達を改善するために特別に設計されています。 この材料は、機械的な性能を提供する強力なステンレススチールの芯材と、熱伝導を向上させる柔らかい外側の素材で構成されています。レンコール サーモクラッド(RENCOL® Thermoclad)の詳細はこちらをご覧ください。
耐腐食性や強い化学薬品の使用など、特別なニーズがある場合には、Inconel®やHastelloy®などの他の材料を使用することもできます。
トルクリミッターのような摺動が起こりうる用途では、多くの場合、潤滑剤を使用する必要があります。 これには、別途グリース等を塗布する場合と、トレランスリングに直接コーティングする場合とがあります。スリップサイクルが多い場合や、達成しようとするトルク値の許容範囲が狭い場合には、コーティングが必要になることがあります。
トレランスリングを使用すると、圧入による組み立てと比較して、部品を組み立てるのに必要な力を低減することができます。トレランスリングで発生する力は、波数・波形状に依存しているため、すべての波が相手部品に完全に挿入された時点で最大の力が発生します。残りの挿入ストロークではその圧入力は安定しており、同等の圧入組立品よりも比較的低くなります。
また、波のばね性により、温度や相手部品の公差の影響を抑え、より安定した組み付け力が得られます。
トレランスリング波形状のばね特性は、異種材間の固定に有効です。システムが熱サイクルにさらされると、多くの場合、異なる2材質は異なる速度で収縮または拡大し、その結果、2部品間のクリアランスが大きくなったり小さくなったりします。 例えば、スチール製のベアリングをアルミニウム製のハウジングに圧入している場合などです。このような場合、トレランスリングは、そのばね特性により、特定の温度範囲でより一貫した固定力を提供します。 これにより、確実な保持が可能となり、ベアリングのブリネリングなどの損傷を防ぐことができます。
ベアリングマウントのような特定の用途では、相手部品の公差やハウジングの精度要件を緩和することができます。トレランスリングのばね特性を調整することで、システムの性能を損なわない範囲で、このような要求を満たすことができます。
詳細を知りたいですか? レンコールトレランスリングの使用方法については、当社のエンジニアにお問い合わせください。