スプリングライドは、ノルグライド ベアリングのPTFE(フッ素樹脂)コンパウンド技術とレンコール トレランスリングのばね技術を融合した、ユニークな高機能摺動材料です。
ばねの公差・ミスアライメント吸収機能と、PTFEの高摺動性能が、「一貫した低フリクション」と「ガタつき・ノイズの低減」を両立します。
構成部品の寸法公差や、設計時には考慮が難しいような、組み立て時に発生してしまうミスアライメントが存在する状況下において、ガタつきを発生させず、スムーズで低く安定した摺動力(軸直方向または回転方向)を必要とするシステムでは、エンジニアは適切な部品をどのように選択していくかという課題に直面します。
このジレンマを解決するには、トレランスリングのラジアルスプリング特性とすべり軸受の低摩擦性を組み合わせることが効果的です。
これを実現するため、サンゴバンは、レンコール トレランスリングとノルグライド ベアリングの技術を融合させたSPRINGLIDE™(スプリングライド)を開発しました。レンコール トレランスリングのスプリング特性が相手部品との間のクリアランスやミスアライメントを吸収し、ノルグライド ベアリングのPTFE層がスムーズで低く安定した摺動性能を創り出します。
この技術により、スプリングライドはノルグライドが持っていた公差・ミスアライメントの吸収性能を飛躍的に向上させ、「ガタつき/ノイズの低減」と「摩擦力の低減・安定化」のトレードオフの問題を解消します。
お客様ごとに、トータルソリューションコスト、製品サイズ、重量、組み立ての容易さなどのそれぞれの基準や優先度は異なります。スプリングライドは、お客様の固有の用途やプロジェクトの要求事項に合わせてカスタムメイドされているため、それぞれの用途にとって最適なソリューションを提案します。
従来のすべり軸受では、はめあい部品の寸法公差の範囲内でクリアランスが変化し、それに伴って摩擦力も変化してしまうことがありました。単純に摩擦を低く抑えるためだけであれば、クリアランスを広くすることが考えられますが、この方法ではガタつきが発生してしまい、ラトルノイズの原因となります。
スプリングライドは、クリアランスをなくすためにわずかに予圧して使用することで、ラトルノイズの原因となるガタつきをなくします。そのため、大きな公差吸収能力を持ったスプリングライドは、はめあい部品の厳しい公差管理を必要とせず一貫した低フリクションを実現します。
ポリマー層は低フリクションを実現するのみならず、ダンパーとしての効果を高め、共振の増幅を抑えます。
完成製品として高性能を実現し、長期間に渡る生産活動を通して期待される品質を満たしていくためには、設計で考慮された軸受け部のミスアライメントに加え、組み立て工程で発生するミスアライメントにも対処する必要があります。この問題を軽視すると、主にスティックスリップや高い摩擦力の原因となるなど、機構を動かしたときに抵抗として明確に感じられるものであるため、最小限にとどめる必要があります。
すべてのスプリングライド スプリング エナジャイズドベアリングは、お客様の開発プロジェクトの特定のトルクや摩擦レベルに合わせてカスタム設計されており、これには、はめあい部品の公差やシステムの組み立て時に生じるミスアライメントや公差も考慮されています。サンゴバンでは様々な試験設備を有しており、お客様の開発業務をサポートします。
スプリングライド スプリング エナジャイズドベアリング技術は、ユニークなデザインの組み合わせを提供する高性能ソリューションです。様々な設計により柔軟性を持たせ、スムーズで一貫した低フリクションとNVHの低減を実現します。
この汎用性の高い高機能素材は、お客様の開発プロジェクトの特定の要求事項に合わせて任意の形状に成型することができます。ここでは、その代表的な形状と特徴を紹介します。
![]() |
フィンガーデザインフィンガーデザインは、軸方向のスライド運動に対してゼロクリアランスと低摩擦を実現します。ガタつきがなく、広い範囲での公差やミスアラインメントに起因する摺動力の変化を最小限に抑えます。 |
![]() |
スロットリブデザインスロットリブデザインもフィンガーデザインと同じく、ゼロクリアランスと低摩擦を実現します。スロットリブデザインはスライド運動だけではなく、回転運動にも対応します、フィンガーデザインよりも高い摩擦力を創り出すことができます。ラジアル荷重に対する剛性を高めることで、ユニットの剛性も高めます。 |
![]() |
ウェーブデザインウェーブデザインは、レンコール トレランスリングと同じ形状をしており、スライド運動と回転運動に対してスロットリブデザインよりも高い摩擦力を創り出すことができます。ポリマー層によって非常に安定した摩擦力を実現します。 |
![]() |
カスタムデザインお客様の開発プロジェクトの特定の要求事項に合わせて任意の形状に成型することができ、無限のデザインの可能性を秘めています。例えば、優れた摺動特性を持つプッシュナットや皿ばねとして使用することができます。これらによってシステムの部品点数を減らしてコスト低減や軽量化を実現するとともに、グリスを使用したときなどの定期メンテナンスや、生産時の品質不具合などのリスクを排除します。 |
![]() |
無限の可能性スプリングライドは材料自体がユニークです。そのユニークな材料と様々な形状を組み合わせることができるため、無限の可能性を秘めています。性能の安定化・最適化、システムの簡素化、省スペース化、軽量化、組み立て工程の簡易化、コスト削減など様々な面で貢献します。サンゴバンと共に新たな付加価値を創造しませんか? |
適切な用途に適切なスプリングライドのデザインを選択するためには、それぞれのデザインの利点と適用可能な範囲を理解することが重要です。それぞれのデザインは様々な用途に対応できるように、異なる剛性値で設計されています。
製品は一貫した低い摺動力でスライドや回転を行うように、用途に合わせて設計されます。フィンガーデザインは低い摩擦力を必要とする用途として、スロットリブデザインはより高い摩擦力を必要とする用途として開発されました。ウェーブデザインは剛性が高く、フリーストップ機構に見られるような固定・保持と摩擦を併せ持つ用途として開発され、フィンガーデザインやスロットリブデザインよりも大きな摩擦力を発生します。
以下のグラフは、3つのデザインの摩擦力と、はめあい部品の寸法公差・ミスアライメントの吸収性能を示しています。
公差の吸収性能について確認するため、はめあい部品の径公差に起因するクリアランス(スプリングライドの圧縮量)のばらつきを想定したテストを行いました。このテストでは、製品の圧縮量を0.25mm~1.00mm(0.75mm差)の間で振り、その際のトルクを測定しています。その結果、フィンガーデザインはトルクへの影響が少ないことが確認できました。
フィンガーデザインとスロットリブデザインは、どちらも優れた公差やミスアライメントの吸収能力を持っています。これは2つのデザインのブリッジ部の剛性を低く設定している為で、一定のばね力を維持しながらクリアランスのばらつきや、ミスアライメントに対して柔軟に対応できるように設計しています。
ウェーブデザインはその高い剛性を利用し、高い摩擦力が必要な用途や、任意の角度や位置で保持できるフリーストップ機構に適しています。自動車のコンソールボックスの蓋やアームレスト、折り畳みテーブル、ヘッドレストなどが用途として挙げられます。
最適なベアリングアセンブリは、アプリケーションの特定の性能要件ごとに合わせてそれぞれカスタマイズする必要があり、ほとんどの場合は複数の異なった性能要件を満たす単一の部品はありません。
スプリングライドのユニークな材料と無限のデザインの可能性は、この複数の異なった性能要件を満たす手助けとなります。スプリングライドを使用することで部品点数を減らし、システム全体の小型化と軽量化を実現します。結果としてコストの低減に寄与します。
スプリングライドは、複数の部品(ばね製品とグリスや摺動部品、オイルダンパーとその組付け部品等)を組み合わせて摺動性能を出している場合や、組付けのためにねじ止めやカシメ加工、フレア加工などの2次加工を行っている場合と比較し際、部品点数や工数低減を通じてシステムのコスト低減を実現できます。
例として、自動車のシートのパイプをフレームに固定する部位が挙げられます。この部位ではスプリングライドはプッシュナットの形状をしており、パイプを固定するとともにPTFE面がベアリングとして機能します。現行ソリューションがフレア加工またはカシメ加工の場合はその工程を削減、または工数の大幅な低減を実現します。潤滑のためにグリスを使用している場合は、組み立て工程においてグリスがシート表皮に付着する不具合を根絶します。
当社のエンジニアとお客様のエンジニア同士でコラボレーションを通じて、お客様のプロジェクトのためにカスタムデザインされたエンジニアのためのソリューションを生み出します。もう「ガタつき/ノイズの低減」と「摩擦力の低減・安定化」のトレードオフの問題に頭を悩ませる必要はありません。ばねの公差・ミスアライメント吸収機能と、PTFEの高摺動性能が、「一貫した低フリクション」と「ガタつき・ノイズの低減」を両立します。
詳細については、makingabigdifference@saint-gobain.comもしくはコンタクトフォームまでお問い合わせください。