レンコールのサーモクラッド・トレランスリングは、電動モーター分野において近年顕著になりつつある熱伝導の問題を解決するために開発されました。レンコールに提示された課題は、トレランスリングの熱伝達能力を高めて、ステーターの取り付け用途でより効果的に使用できるようにすることでした。このプロジェクトで、バイメタル素材のサーモクラッドを開発しました。サーモクラッド材料とレンコールトレランスリングを組み合わせることで、未来に向けて急速に普及しつつある電動モーターの熱管理と生産効率の両方に貢献することができます。
トレランスリングとは、2つの円筒形の相手部品を締結するために使用される、波形状や同様の突起形状を持つカスタムデザインの高機能部品です。トレランスリングの波はばねのような働きをし、圧縮されると2つの部品を所定の位置に保持する力を発生させます。波が圧縮されればされるほど、その力は大きくなります。この反発力によって、2つの部品は、接合部品や周囲のメカニズムにダメージを与えず、許容レベルの力でしっかりと固定されます。トレランスリングの仕組みは非常に簡単ですが、それを生み出す工程は非常に複雑で、詳細な要求仕様を満たすよう、それぞれのトレランスリングが高度に設計されています。
トレランスリングを設計する際には、様々な要素を考慮する必要がありますが、その一部を以下に示します。
設計段階では、サンゴバンのエンジニアがシステム要件の把握とレビューに参加します。その後、設計インプットと弊社の推奨事項をまとめた設計提案書を提出します。
トレランスリングには複数の用途があり、さまざまな要求を満たすことができます。しかし、トレランスリングを使用するきっかけは、一定のラジアル荷重の提供、ますます厳しくなるトルクスリップ仕様、電気伝導率と絶縁特性、熱膨張、熱伝達(当社のサーモクラッド・トレランスリングを使用することで解決)、一定の剛性範囲を満たすことなど、通常は1つか2つの要素に集中します。
トレランスリングは自動車業界で広く使用されていますが、モーターの電動化に伴い、製品に求められる要求も変化しています。コストや重量の低減が優先順位の上位に上がり、より軽量な材料の要求が増加しています。この変化の影響と代替材料の使用により、新たな課題が生まれています。
確実な保持力 – 温度差や公差吸収。レンコールトレランスリングの波のばね特性は、異なる温度範囲で一貫した力を発揮し、どのような使用状況でも部品を確実に保持します。
製造コストの削減 – コストと時間のかかる熱収縮や接着工程を省き、工程効率を最大限に高めます。レンコールトレランスリングは、部品を組み立てるのに必要な力を減らし、組み立ての要求を最小限に抑えることができます。
環境に優しい – エネルギーを大量に消費する工程を省くことで、二酸化炭素排出量を削減することができます。 レンコールトレランスリングは常温で組み立てることができ、さらに硬化や冷却を必要としないため、二酸化炭素を節約することができます。
サンゴバンでは、特に電動モーターにおいて熱伝導がますます重要な要素になっていることを認識していました。標準的なトレランスリングは、信頼性の高い電動モーターの寿命を長く保つために必要な熱伝達レベルには最適化されていません。
この問題を解決するために、私たちはサーモクラッドを開発しました。頑丈なスチールコアと柔らかい熱伝導素材を組み合わせた、全く新しいバイメタル技術です。
当社のテストによると、新しいサーモクラッド技術は、トレランスリングの熱伝達性能を最大4倍に向上させました。
つまり、レンコール サーモクラッド(Aluclad)バイメタル素材のおかげで、最高性能の熱接着剤と同等の性能を持つことに成功したのです。
トレランスリングを使用することで、確実な保持力、低コスト、環境に配慮した生産(二酸化炭素を大量に消費する加熱・冷却段階がない)などのメリットを得ることができます。
レンコール サーモクラッドを使用することで、電動モーターに携わるエンジニアはより多くの選択肢を得ることができます。サンゴバンでは、以下に示す4つの主な電動モーター用途について、お客様の要求を満たすレンコールトレランスリングをご用意しています。 サンゴバンは1億個以上のトレランスリングを電動モーター用途に提供してきましたので、安心してご利用いただけます。
電動モーターへの移行と軽量化の必要性から、これらの部品の製造に使用される材料に変化が生じています。電動モーターに使用されているアルミニウムのハウジングは、鉄ベースのステーターよりも高い割合で温度によって膨張し、保持力の低下を引き起こし、その結果、ステーター(鉄心、コア)が外れてしまうことがあります。 レンコールトレランスリングは、この問題を解決することができます。
転がり軸受は、低摩擦を必要とする多くの回転システムに不可欠な部品です。そして取り付け方法の選択は、軸受の性能に大きな影響を与えます。圧入は一般的な方法ですが、組み立て時の力が大きい、高温時に取り付けたベアリングの保持力が低下する、精密な製造によりコストがかかるなどの問題があります。ここでは、ベアリングの取り付けにトレランスリングを使用することで得られるメリットを見てみました。
センサーマウントや簡易締結とも呼ばれています。この場合、トレランスリングを使用することで、組み付け後にセンサーの位置を調整することができます。通常の圧入や接着剤では、組み立ての際に柔軟性がありません。トレランスリングは、組み立て時間を短縮し、軽量化の要求に応えながら、確実でコンパクトな固定を実現します。