レンコールトレランスリングは、締結具であると同時にトルクリミッターでもあり、機械的な保護を提供する、堅牢性があり安定した省スペースのスリップクラッチです。
他のクラッチと同様に、レンコールを使用したスリップクラッチは、過負荷クラッチやトルクリミッターとも呼ばれ、2つの機械部品を互いに保護することができます。スリップクラッチは、はめ合いの2つの部品の間を滑らせることで、トルクを制御します。トルクが超過したり、出力側が衝撃的な負荷を受けたりすると、トレランスリングが部品をスリップさせます。
スリップの後、レンコールトレランスリングは自動的にリセットされます。機械やロボットは、中断することなく、遅延することなく、ただひたすら操作を続けることができます。
取り付けが簡単なレンコールトレランスリングは、駆動部品の同軸上に取り付けることができるので、リングを後付けするための大掛かりなオーバーホールは必要ありません。
レンコールトレランスリングは、高品質の炭素鋼、ステンレス鋼、または合金から作られており、ばねの力と摩擦を利用して機能します。リング周方向に配置された波形の構造が、必要な半径方向の力を提供します。ばねの理論についての詳細はこちらをご覧ください。
レンコールトレランスリングは、締結具とトルクリミッターユニットを別々に組み込んでスペースを無駄にすることなく、両方の役割を果たします。スペースを節約し、重量を減らし、コストを削減することができます。
レンコールトレランスリングは、2つの駆動部品を固定してトルクを伝達します。しきい値を超えた場合、トレランスリングは相手部品を相対的にスリップさせることで過負荷から保護し、トルクを制限してシステムを損傷から守ります。
一般的にトルクリミッターや過負荷クラッチとして知られているトルクスリップデバイスは、多くの部品からなる複雑なシステムになります。レンコールトレランスリングのソリューションは、既存部品をひとまとめにすることで、重量、スペース、全体的なコストを削減することができます。
トレランスリングの省スペース化は、トレランスリングが駆動部品と被駆動部品の間のインライン固定として機能することで可能になります。これにより、スペースと重量を必要とするスリップクラッチユニットを追加する必要がありません。
レンコールトレランスリングは、周辺部品をより効率よく過負荷から保護することで、エンジニアがより軽い素材を使用して、よりかさばらないシステムの設計が可能になります。
レンコールトレランスリングは、エンジニア同士がお客様と協力して設計します。トレランスリングは単なる独立した部品ではなく、より大きなシステムの一部なのです。レンコールトレランスリングは、お客様の個々の用途に合わせて当社のエンジニアが設計しますが、その共通点はリング周囲に配置される波の構造です。
トレランスリングは、波の頂部が相手部品にわずかに埋め込まれ、波の底部が滑り面として機能するように設計されています。波は圧縮されて半径方向の力を発揮し、これがばねの力となって部品間の摩擦を生み、機械的な損傷を防ぎ、スリップによってトルクを制限します。システムに応じて、レンコールトレランスリングはシャフトまたはハウジングで滑るように設計することができます。このリングを独自の個体潤滑剤でコーティングすると、グリースの塗布が不要になります。
各トルクリミッターは、お客様のシステムとの互換性を100%確保するために、実際の相手部品を使用して、正確な条件下で社内試験を行っています。このように、私たちはお客様に安心してお使いいただける製品を提供しています。
レンコールトレランスリングは、カタログ品から最適なトルクレベルを選択するのではなく、カスタム設計されます。
0.2 Nmから2000 Nmのトルク範囲、あるいはそれ以上のトルクを発生させるトレランスリングの設計が可能です(システムの寸法と強度によります)。
図1:典型的なトレランスリングのサイズとトルクの計算値比較。この範囲外のアプリケーションも可能ですので、ご相談ください。
アプリケーションによっては、多数のスリップサイクルで一貫したトルクを必要とする場合があります。レンコールトレランスリングは、サイクル経過によるトルク低下を抑えるように設計することができ、システムの寿命まで一貫した性能を発揮します。
図2:直径50mmのトレランスリングをシャフトに取り付け、5000回のスリップサイクルテストを行った場合の代表的なトルク性能。
• 衝撃からシステムを守る
• システムのイナーシャを低減し、応答性を向上させる
• 締結具とトルクリミッターの両方の役割を果たす
• 省スペース - 小さなスペースに設置可能
• 複数のスリップサイクルで一貫したトルクを提供し、トルク低下を最小限に
• 自動リセット機能で無駄な時間を省く
• システムへの組み込みや後付けが可能
• 用途別にカスタムメイド
トルクリミッターは、機械的な過負荷から機器を保護するもので、入力ショックや予期せぬ停止、エンドユーザーのエラーによる損傷からシステムを保護することができます。この機能は、ロボット用の電気モータや、ベルトドライブ、パワードテールゲート、ブレーキアシストシステムなどの自動車システムでよく見られます。
トルクスリップ装置としては、磁気クラッチやフリクションスリップデバイス、ボールディテントデバイスなど、さまざまな形態があります。レンコールトレランスリングと比較すると、これらの装置はいずれも同程度のトルクを得るためにはより多くのスペースを必要とします。
日常的な操作では、レンコールトレランスリングがスムースな操作をサポートします。
レンコールトレランスリングは、ドライブギアと出力軸の間に導入されます。例えば、出力側が障害物にぶつかったり、衝撃的な負荷を受けたりした場合、レンコールトレランスリングはギアと軸の間に瞬間的なスリップを発生させます。出力軸の位置は、サーボの角度センサーやポテンショメーターによって監視されているので、スリップが発生しても、システムは何が起こったかを「知って」おり、位置情報を失うことなく対処することができます。
サーボモーターの小型化が進んでいます。当社がどのようにして史上最小のトレランスリングを製作したかについて、ケーススタディをご覧ください。
トレランスリングは、保護すべき対象に応じて、サーボの定格または駆動システムの定格に適したトルクレベルでスリップが発生するように設計することができます。下の2つのグラフは0.4Nmのトルクスリップサイクルを示していますが、レンコールトレランスリングの設計によって、特定のサーボモーターに対して2.5Nmというさらに高いトルク設定が可能になります。
トルクスリップテスト結果(横軸:サイクル数)
トルクスリップテスト結果(横軸:回転角度)
自動車業界において、レンコールトレランスリングは、電動テールゲートやサイドドアなどの外装部品に使用されています。これらの用途では、レンコールトレランスリングがウォームギアのハブとスピンドルドライブの間に、直接またはウォームギアのアダプターハブを介して導入されています。例えば、出力側が障害物にぶつかったり、衝撃荷重を受けたりした場合、レンコールトレランスリングがウォームギアとスピンドルドライブの間で瞬間的なスリップを発生させ、システムを損傷から守ります。
このような用途でのレンコールトレランスリングの主な利点は、異なるトルクレベルが必要なシステムにおいても、省スペースで共通の構造を採用できることです。トレランスリングは、テールゲートやサイドドアの重量に適したトルクレベルでスリップが発生するように設計することができ、同じはめ合い部品が使用可能です。
このタイプのシステムに必要な標準的な公称トルクは、1.0Nmから6.0Nmの範囲です。
トレランスリングは単なる独立した部品ではなく、より大きなシステムの不可欠な部分であるため、その設計には詳細な知識に基づくアプローチが必要です。そのため、レンコールトレランスリングの設計は、エンジニア同士がお客様と協力して行うことになります。このプロセスは、当社のFEA機能と社内試験を利用して、はめ合い部品を含むシステムを主要な条件で分析することにより、より強力なものとなります。これにより、私たちとお客様が、提供されるソリューションにより大きな自信を持つことができるようになります。
エンジニアリング上の課題をお持ちの方は、ぜひサンゴバンのチームにご相談ください。お問い合わせフォーム、または電子メール(makingabigdifference@saint-gobain.com)でご連絡ください。