自動車用のテールゲートやスライドドアの電動化はさらに進み、高級車のみならず様々なモデルやグレードに普及するようになってきました。
電動ドアクローザーの技術革新は、主にテールゲートやサイドドア開閉機構に見ることができます。近年、スピンドルドライブタイプの電動開閉機構の普及が急速に増えてきました。なぜか?それは、これまでのソリューションよりも車室内の空間を広くしたり、ドライバーからのリアビューの死角を減らしたりするといったことが背景の一つとしてあります。ただし、これまでの機構と同じく、トルクリミッターなどの安全機構が必要な事には変わりありません。
パワーテールゲートはすでにかなり普及しており、。パワーサイドドアは高級車を中心に普及が進んでいます。
電動ドアシステムは、車室内のボタンやワイヤレスリモコン、フットセンサーなどから信号が送られ、ドアの開閉アクチュエーターが作動します。これにより、テールゲートやサイドドアをモーターの力によって開閉することができます。
このようなアプリケーションでは、人や荷物がドアに挟まれてしまったり、ドアが自動開閉中に障害物に接触してしまったりすることがあるため、人やシステムを過負荷から保護する必要があります。アクチュエーター内には多数の小さなギアが使用されており、これらの部品が破損してしまうと開閉システムが正常に動作しなくなってしまいます。
センサーによって過負荷が検知され、システムが停止するなどの仕組みが設けられているケースがありますが、フェイルセーフ(センサーや構成部品、制御システムの故障、誤作動は起こりえるものであるとの前提に立ち、このような場合に安全な状態に導くような仕組みを作っておく)の考え方から、メカニカルに動作するトルクリミッターの搭載が非常に重要となっています。特に人がけがをしてしまった場合は取り返しがつきません。
アクチュエーターの構造によって、ギア機構内や、ウォームギヤとシャフトの間にわずか1mm程度の隙間を設けてレンコールトレランスリングを組付けることで、過負荷から人やシステムを保護できる機構を付加できます。例えば、ドアが障害物にぶつかったり、衝撃荷重を受けたりした場合、レンコールトレランスリングは軸部品との間でスリップ(トルクリミッター)し、過負荷を逃がすことができます。過負荷の状態が終わった後、レンコールトレランスリングは自動的に固定の状態に戻り、ドアは通常通り動作するようになります。
レンコールトレランスリングは、波形状のラジアルスプリングを持つ多機能部品締結リングです。2つのはめ合い部品の約1mmと非常にわずかなすき間に挟まれ、圧縮された波は弾性 / 反発力 / 摩擦力を発生させ、部品の固定、公差や熱膨張の吸収、トルクリミッターの役割を果たします。
組付け後は、モーターからの出力を利用してドアを開閉させるために、トレランスリングはギアなどに必要なトルクを伝達する役割(部品の固定)を果たします。システムに過負荷がかかった場合は、その負荷によって「固定」の状態から「スリップ」の状態に変わり、過負荷を逃がします。
レンコールトレランスリングは、お客様が過負荷として規定するトルクや、その他の技術要求事項に基づいてカスタム設計することができる超小型トルクリミッター(メカニカルスリップクラッチ)です。このトルクリミッターの詳細は、トルクリミッターとしてのレンコールトレランスリングのページをご覧ください。
電動ドアシステムでレンコールトレランスリングを使用することには、いくつかの利点があります。
トレランスリングはそれ単体で機能する部品ではなく、大きなシステムの一部として組み込まれて機能する部品なのです。レンコールトレランスリングは、当社のエンジニアがお客様の個々の用途や技術要求に合わせて設計します。一見シンプルなデザインですが、トレランスリングは実に複雑な技術で作られた部品なのです。トレランスリングの仕組みについては、トレランスリングの仕組みのページをご覧ください。
トレランスリングは、お客様の個々のプロジェクトに合わせて設計され、世界各地にある当社の試験設備を使用して性能試験を行います。技術要求に応じて回転角度や方向、スピード、耐久サイクル数を任意で設定することができます。
実際のユニットを使用して評価を行う前に、サブアッセンブリレベルでの評価を当社試験機にて行うことにより、早期に製品の実現可能性を評価できるため、開発期間やコストを圧縮することができます。
図1:一般的なトレランスリングにおける理論的な製品寸法と最大トルクの目安値です。この範囲外の設計も可能ですので、個別にご相談ください。
レンコールトレランスリングは、一貫したトルクでスリップします。これは、はめあい部品を最適化することで達成することができます。図2に500回にわたるスリップテストの結果を示します。この試験は、電動ドアシステム用のトルクリミッターシステムの一般的な試験方法に基づいています。
図2:500回にわたるスリップテストの結果。
トレランスリングは単なる独立した部品ではなく、より大きなシステムの不可欠な部分であるため、その設計には詳細な知識に基づくアプローチが必要です。そのため、レンコールトレランスリングの設計は、エンジニア同士が協力して行うことになります。このプロセスでは、当社の設計技術と社内試験を通して、構成部品を含む製品の最適な設計を行い、お客様に提案します。
技術的なの課題に直面したら、サンゴバンに相談してください。私たちの経験、総合的な試験設備、複数の業界に関する知識は、将来のソリューションを創り上げるための重要な要素となります。お問い合わせは、お問い合わせフォームをご利用いただくか、makingabigdifference@saint-gobain.comまでメールでお問い合わせください。